馬上の二人

読書記録。ネタバレ有り。

ジョン・ディクスン・カー『絞首台の謎』

絞首台の謎【新訳版】 (創元推理文庫)

絞首台の謎【新訳版】 (創元推理文庫)

 

 この小説のもっとも強烈な奇想は「破滅街(ルイネーション街)」という存在しない街に人間が連れ去られたというくだり。明白な不可能状況の犯罪とは違って、どう受け止めればいいのかもよくわからない、悪い冗談のようなもので、本気で受け止めているのはバンコランぐらいだ。しかもそのおかげで事件が解決する。起こっていることの単純さに比べて奇想が大掛かりすぎる。狐につままれたような気分になる。それでこそカーを読んだというものかもしれない。