馬上の二人

読書記録。ネタバレ有り。

カーター・ディクスン『白い僧院の殺人』

白い僧院の殺人 (創元推理文庫 119-3)

白い僧院の殺人 (創元推理文庫 119-3)

 

 雪に囲われた別館には、死体発見者の足跡しかない。間接的な雪の密室……というのが話の主眼ではあるが、カーの密室ものは密室よりも奇妙なことが背後で起きる。ある奇妙な遺書が発見されるところで謎というか異変のブーストがかかって「来た! きたきたきたこれだ!」という感覚になった。すべての前提がブッ壊れるあの感じ。しかも、それが謎を解く鍵でもあるのだ。

 物理的トリックだけではなく、心理的トリックが複雑な人物の動機と絡み合って、ひとつひとつの過程は合理的なのに奇跡のような事態が出現する。どうすればこういうことができるのだろう。