馬上の二人

読書記録。ネタバレ有り。

米澤穂信『愚者のエンドロール』

愚者のエンドロール (角川文庫)

愚者のエンドロール (角川文庫)

 

  自分が図書館で読んでた版ではイラスト付きで、千反田えるの絵はちょっと想像と違った。アニメでイメージが固まってしまっている。

 多重解決を扱っている。実際に死体を出すわけにはいかないので、自主制作映画の真相を考えるというのがお題になっているのだけど、作品内の情報だけではなく外部の制作者たちにあるメタな諸条件もまた問題の一部になっている、ところが面白い。中村青司ネタなど、マニア向けの目配せも多々ある。

 わりと原作に忠実にアニメ化されていたようだ。副題の意味がわかったり、壁新聞部の挿話や「十文字」のくだりなど、今後の展開にも影響する挿話が少しずつ入っていることが確認できた。氷菓シリーズ全体を通して、「才能」に関する自意識の屈託、というのが主題になっている。それが見えてきてから、作品全体で何をやりたかったのかが理解できたようにも思う。