馬上の二人

読書記録。ネタバレ有り。

米澤穂信『氷菓』

氷菓 (角川文庫)

氷菓 (角川文庫)

 

 アニメ版から先に見ていた。すこし印象が変わった。

 学生運動の激動の時代と、何事にも情熱を持てない省エネ主義の現代の学生の想像力をつなぐために、このような作劇がとられたということだろう。謎が小粒なのが気になるが、学校内の資料が少しずつ発見されていく過程など、各エピソードがゆるやかな連関をもって全体像が見えてくるように構成されている。アーカイブを残しておくことは大事だ、と当たり前のことを思う。現代日本は、公文書も裁判資料もバカスカ捨ててる近代国家の体をなしていない国で、この学校のほうがまともに思えるぐらい。

 千反田えるの扱いの都合のよさが気になる。折木奉太郎を動かすためのフックとして配置されているだけで、あまり主体性が感じられない。そのへんはこれから変わってくるのかもしれないが。