馬上の二人

読書記録。ネタバレ有り。

森博嗣『すべてがFになる』

すべてがFになる (講談社文庫)

すべてがFになる (講談社文庫)

 

  子供の頃に読んで大ネタのトリックだけはうっすら憶えていたのだが、それでも面白かった。なんだか「十三号独房の問題」のアップデート版みたい。この設定でしかありえない斬新な密室トリックとは別に、犯人が密閉状態の研究所の中で"存在を消す"トリックの方が優美でスマートだ。さり気なくやっているが、こっちのトリックの方がすごいんじゃないかと思う。この密室トリックを成し遂げるための初期状態は、なかなか生々しいものだが、犯人の天才性が地上の倫理を消去するような書き方をしている。そのズルさが気になる。

 西之園萌絵が天然お嬢様キャラだったり、大学の仲間とのだらだらしたキャンプとか、そのへんが意外と読みどころになっている。なぜかこういう場面が好きだ。