馬上の二人

読書記録。ネタバレ有り。

ロバート・ルイス・スティーヴンソン『宝島』

宝島 (新潮文庫)

宝島 (新潮文庫)

 

 描写は安定しているが、プロットの展開がもっさりしている。豪華な舞台のわりに敵が海賊だけなのが単調な原因だと思う。『十五少年漂流記』のうまいのは、サバイバルの後半で助けの船と海賊が同時にやってくる(しかも自陣営は二箇所に分かれている)という複雑さだ。『宝島』では、この長さを主人公少年の間諜で持たせているが、やはり不自然だし活劇としては停滞する。一人称で冒険小説をやると都合のいい覗き見・立ち聞きの場面が多くなるのだな、と思った。

 冒頭に出てくるがその場の話題とは関係ないので自然に忘れている名前を、あとで「もちろん覚えているかと思うが……」というくだりがあり、こういうところはさり気なく面白い。ミステリーにも使えそうな技である。