馬上の二人

読書記録。ネタバレ有り。

カーター・ディクスン『黒死荘の殺人』

黒死荘の殺人 (創元推理文庫)

黒死荘の殺人 (創元推理文庫)

 

 ヘンリー・メリヴェール卿の初登場作品らしい。密室トリックは、天城一は抜け穴密室と称していたが、どちらかといえば『三つの棺』で解説された、凶器の抜け穴+凶器消失トリックの応用といえるものだろう。被害者自身が別の凶器を部屋に持ち込み、それが真の凶器と誤認されることで、状況が複雑になる。バールストン・ギャンビットを応用した真犯人の隠蔽の仕方も面白い。「顔が潰れたり燃やされたりした死体を見たら、BGを疑うべき」という公式をいいかげんわたしは憶えるべきだと思う。

 実は真相を知っている部分的共犯者が二人もいるのはどうかと思った。後半のサスペンスも又聞きが多く、何が起こっているのか曖昧で微妙に盛り上がらない。このせいで完成度がやや下がり、傑作認定には僅かに及ばない。